わたしは、低身長のお子さんの診療に携わってきました。受診されたお子さんのなかには、治療を必要とするお子さんもいます。しかしその一方で、生活面の改善をするだけで身長の伸びがよくなっているお子さんも多数いらっしゃいます。そうした経験から、「身長を伸ばすために役立つ情報を、具体的かつ正確に伝えたい」と思い、まとめました。
身長に関しては、俗説や間違った情報がまかり通っている現状があります。親ならばだれもが、「わが子の身長を伸ばしたい」「健やかに大きく育ってほしい」と願うものです。わたしは、その親の思いや愛情が、「正しい知識や情報」に基づいたうえで、お子さんへ向けられてほしいと願っています。
このサイトでは、科学的知識に基づき、栄養や睡眠、運動などの観点から、身長を伸ぱすには何か大切なのかをわかりやすく解説しています。また、すぐに生かせるように、「具体的にはどうすればいいのか」といった情報も紹介しました。
低身長は、「単に背が低い」ということにとどまらず、その原因が病気に起因することがあります。そうした病気による低身長についても医学的に解説し、どのような場合に受診や治療が必要なのかも述べています。低身長の治療の中心となるのが、成長ホルモン療法です。その内容についても触れました。
身長が伸びるのは、子どもの時期だけ。伸びる時期には、締め切りがあります。具体的には、乳幼児から中学生くらいまでの時期です。からだがおとなになってしまうと、もはや伸びません。残念ながらおとなの身長を伸ばす方法は、今のところないのです。つまり、身長を伸ぱすのは、子どもの時期だけがチャンス。この時期に、親としてできるだけのことをしてあげたいものです。
ただ、忘れてはならないのは、身長だけにこだわる必要はないということ。子どもたちの個性を生かしながら、いろんな能カを伸ばしてあげることが何より大切です。一人ひとりの子どもは、「数多くの可能性の芽」を必ずもっています。そういった、わが子の個性や可能性、能カを発見して伸ばしてあげることも、親の大切な役割だと思います。子どもの個性や気持ちを大切にしながら、のびのびと「可能性の芽」を伸
ぱせるような親の思いや配慮……それが、めぐりめぐって健やかな成長や身長を伸ぱすことにつなかつてくることでしょう。
子どもの身長は、親からの遺伝だけでは決まりません
栄養や運動、睡眠などの生活環境が、身長の伸びを大きく左右している
身長は両親よりも高く伸ばせる
「親が低かつたから、わたしも背が伸びなかつたのよね…」とは、よく耳にする言葉。それでも、子どもに対しては「少しでも背を高く伸ばしてあげたい」と思うのが、親心です。ほんとうに、「背は遺伝で決まる」のでしようか。たとえば、バレーボールや格闘技などのスポーツ選手には、両親よりかなりの高身長に成長した人が少なくありません。皆さんの身近にも、「両親は背が高いのに、子どもは低い」とか、「両親は低いのに、子どもは大きく成長した」という例があるのではないでしょうか。
じつは、子どもの身長を決めるのは、遺伝だけではありません。親の影響も受けますが、あくまでも「そうなりやすい体質」を受け継いだだけのこと。「いかに成長を促す生活を送るか」という、生活環境が大きく左右するのです。
目安となる、子どもの予測身長
とはいえ、「子どもの最終的な身長」が予測できれば、知リたいですよね。親の影響も受けているので、ある程度、子どもの最終身長を予測する方法があります。
男の子の場合は、(父親の身長+母親の身長+13)÷2が、女の子では、(父親の身長+母親の身長-13)÷2が予測される身長です。ここから、どれだけプラスaを伸ばすかが大きなポイント。
言い換えれば、生活習慣によってはマイナスに
なることもあり、注意が必要なのです。
成長を促しやすい生活環境とは
身長を伸ばすために一番必要となるものは、「成長ホルモン」です。これは、脳の下にある[脳下垂体]というところから分泌されます。成長ホルモンが、肝臓などに働きかけて[ソマトメジンC]という別のホルモンをつくり、骨の成長を促します。そして骨が成長し、身長が伸びるというしくみです。身長を伸ばすには、成長ホルモンの分泌を多くすればよいのです。
ただ、栄養が不足してしまうと、骨に栄養がいきわたらずソマトメジンCが十分につくられないため、背は伸びません。また、丈夫な骨に成長させるための「適度な運動」も必要です。一方で、ストレスなどの負担は、成長の妨げとなります。このように、身長は遺伝だけではなく、栄養や運動などの生活環境が大切なのです。